昔の合気道や武道、芸道では礼儀が重んじられてきましたが、芸人の世界でも、礼儀は大事になるようです。
北野武さんの著書、『新しい道徳「いい事をすると気持ちがいいのはなぜか」』の中に、北野武さんの教える礼儀について書かれていましたのでご紹介します。
たとえば俺は弟子にも最低限のことしかいわない。理由は同じだ。
最低限というのは、あいさつと礼儀だ。芸人の世界は縦社会だ。自分より先にこの世界に入った人は先輩として立てなくてはいけない。
それから相手がいくら年下でも、仕事をする以上は最低限の礼儀がある。テレビの製作現場では、若いADがディレクターやプロヂューサーにこき使われている。そのディレクターやプロデューサーは、俺たち芸人のことを大事にしてくれる。
それで、ときどき勘違いする弟子がいる。自分まで偉くなったつもりで、ADにぞんざいな口をきいたりする。そういうことだけは絶対にやっちゃいけないよ、と教える。
それくらいの必要最低限のことを教えたら、あとは放っておく。
冷たいようだけど、それ以上は本人が努力するしかない。
不思議なもので、成功する芸人は例外なく、あいさつをきちんとするし、それなりの礼儀もわきまえているものだ。人当たりもいいし、ADに横柄な態度をとることもない。
芸人には芸人の道徳ってものがあるわけだけれど、それを細かく教える必要はないし、おしえたってなかなか身につくものじゃない。
ところが、向上心があれば、そういうものは自然に身につく。芸人に限らず、どの世界でも成功する人間は、だいたいそういうもんだろう。
人間社会の中で、上に行こうとする奴は、放っておいても道徳的になる。
そうでないと、上には行けない。

礼儀正しくしていれば、それが自分に返って来るものであるからこそ、昔から礼儀が大事であると言われてきました。
いつも挨拶してくれる人とそうでない人、感謝を伝えてくる人とそうでない人、素直に謝れる人と、言い訳したり、不貞腐れたり、いじけたり、逆切れする人とでは、誰だって礼儀正しい人の方が好きになる筈です。
しかし礼儀の中身や意味が分からなければ、形式ばったものになったり、自分以外の誰かのためにやるものだと思われたりします。またそうすると、礼を欠いて人間関係をこじらせたり、自分の立場が悪くなってしまうかもしれません。
逆に他者に気づかいや配慮できる人、礼儀正しい人とは大変素晴らしいです。
