武術の教えで、「自分を完全否定しろ」という教えがあります。また「頭が悪い奴には武術は出来ない」と言われたりもしていました。
その理由の一つは閃き、インスピレーションが大事であることで、それが無ければ、自分が作り出した枠や世界、思い込みに永遠に囚われ、成長することなく、いつまでも同じ所をぐるぐるすることになるからです。
それと自分が正しいのであれば、それをやり続けるということだし、自分が出来ているのなら、それを変える必要はないということで、そうであるなら後は何をやるのかということになってきます。
自分の延長上に本当に一流の世界、達人の世界、悟りの世界があるのかと言えば、ないのではないでしょうか。
また凄い人がいれば、あの人は特別だからといった考えや、武道の達人を見て、あんなのは嘘だと、自分を肯定し、達人を否定することになりますが、それでは当然ながら達人の境地に、近づくことすら出来ません。
そうではなく自分はこうやっている、だったら違うんじゃないか、と自分を否定して考えるのが、武術の考え、体の使い方です。
そうやって全てをもう一度総点検し、それらを変えて行くことによって、自分が今まで知ることの出来なかった世界を、見ることが出来るようになって行きます。
そのため一旦全てを否定する必要があるのです。

自分を否定することは、自分の存在そのものを否定するのではなく、自分のやり方、考え方を否定したり、違う可能性を考えるということです。
自分は正しいんだと決めつけたり、プライドを持つのではなく、そうした考えが昔の日本人的な考えであったし、素直さや謙虚になれる考えです。
しかし今の欧米的な考えとは、考え方が真逆であるため、十分な説明をしなければ理解しづらかったり、少し入って行きにくい所があるかもしれません。
ただ本当の自分自身を知るためには、魂に覆いかぶさっているものを、取り除いていくことでしか、自分を知ることが出来ないように、自分を変えたり、捨てたりすることなく、今の自分にプラスするだけでは限界があるでしょう。
それをいつの段階で気付いて取り組むか、もしくは本当は出来ないのに自分は出来ると言い聞かせたり、思い込みが強く、人の言うことを全く聞かない頑固爺みたいになって行くのか。
間違ったことは改めていきたい、いいものはどんどん吸収していきたい、また自分は正しいと言い張る頑固爺にならないよう、今の内に柔らかい心と頭を作っておきたいのであれば、体の使い方に取り組んでみて下さい。